Captain Freshへ投資した理由

Nao Murakami
7 min readAug 21, 2020

先日のプレスリリースの通り、インドにて鮮魚のB2Bコマース(オンライン卸し・サプライチェーン効率化)事業を行うCaptain Freshへ投資を実行しました。VCファーストラウンドでの投資となります。

まぁ、地味な会社です(笑。縁の下の力持ちというか。ただ、めっちゃ良い会社なんですね。

こちらでは簡単に、我々がなぜ当社への投資を決めたのかについて書いてみたいと思います。

ここには書ききれないことや書けないことも含め、様々な観点で魅了されて投資を決めているのですが、端的にまとめると、

1)非効率がまかり通っている巨大市場で、2)業界経験が豊富で優秀なチームが、3)収益性とグロースを両立可能なビジネスモデルで、4)既に1年間爆速で成長してきていることが確認できたから、となります。

以下で、ひとつひとつ説明していきます。

既存のサプライチェーンがめちゃくちゃ非効率

インドにおける鮮魚の流通は構造的にとても非効率なものとなってしまっています。インド国内の漁師や養殖事業者(=供給側)は1,000万事業者以上存在していて、同時に魚屋などの小売店(=需要側)も100万店舗以上が存在しています。そして、これら需要側と供給側の双方のプレーヤ間には、何層もの中間流通業者が存在していて、それぞれがマージンを抜く構造になってしまっています。

インドの鮮魚流通の構造イメージ
インドの鮮魚流通の構造イメージ

これらの非効率さにより、鮮度が命の魚介類の流通でありながら、水揚げから小売店に届くまでに3日〜3.5日を要しており、またコールドチェーンの整備もいい加減な複数業者を介する間に商品は大きく痛むため、その流通過程で実に30–35%以上の商品が廃棄処分となってしまっているのが現状です。さらに、小売店はその仕入れの大半を地元の小規模ディストリビューターが不定期に取りに来るオーダーに依存しているため、供給が非常に不安定となっており、これが事業上の大きな機会損失を生んでしまっています 。

当社はこれらの課題に対し、当社が供給側と需要側の双方の事業者と直接繋がり、物流機能も提供することで解決策を提供しており、その提供価値は非常に大きいと想定しています。実際、当社を経由した流通においては、水揚げから小売店に届くまでの日数にして1〜1.5日を短縮できており、また中間業者を排除することと独自のコールドチェーン管理で商品の痛みも最小限に抑えられるため、流通過程での廃棄処分は5%以下となっています。また、多くの小売店が当社から安定した商品供給を受けられるようになったため、事業機会を逸せずに済むようになっている点も大きな価値提供です。

市場規模は巨大

インドは実は隠れたシーフード大国であり、魚介類の輸出量は世界第二位となっています。その国内消費も巨大市場で、その規模は2兆円以上に達していると推定され、過去5年間はCAGR 14.2%で成長してきています。インドでは継続的な経済成長により可処分所得が増加し続けていることや、海外との人的な交流などにより一般市民でも多様な食文化に対してオープンになってきていることもあり、今後も市場規模は成長の一途を辿ると考えられています。

ファウンダーマーケットフィット

当社のファウンダーはそれぞれに鮮魚流通の業界経験とサプライチェーン系スタートアップでの経験を積んでおり、高いファウンダーマーケットフィットを有していると考えました。

特に、CEOのUtham Gowda氏は、前職ではインドの魚介類輸出で業界大手のNekkanti Sea FoodsにてEVPを務めており、インドにおける魚介類市場に対する洞察が非常に深いです。また、そもそもNekkantiへ入社した経緯が、長年O3Capitalというインド地場の投資銀行にて同社を担当しており、創業社長から信頼を得たことでヘッドハントされた形となっており、バンカーとして業界を外部から分析してきた経験と、Nekkanti社内で事業に直接携わった経験の両方を有していることから、当領域への理解レベルは非常に高いものとなっています。

優良なビジネスモデル(レスワーキングキャピタル・ハイマージン)

当社のビジネスモデルはいくつかの点で優良なものであると考えています。まず、ほぼ全ての小売店からの支払い(入金)が即時であるため、多くのB2Bコマースにありがちな急速な成長に伴い必要なワーキングキャピタルが肥大化するということが起こりにくい構造になっています。この点については、弊ファンド投資先のShopKirana社も同様の構造になっており、外部調達資金をほぼ全てグロースに投下することが可能となるため、成長期に入ったタイミングで必要とされる資金調達量を抑えることができる点でも優れています。また、当社のビジネスはマージン構造が比較的優良で、アーリーステージの現時点でも比較的高いマージンが取れており、今後テクノロジーを活用したオペレーションの効率化や取引量増加などにより更に高いマージンが獲得できるものと想定しています。この様に、ハイマージンを維持しながら、外部調達した資金は全てグロースに投下できるという構造になっており、優良なビジネスモデルを有していると判断しました。

過去1年間の業績成長(PMFとエグゼキューション能力)

当社は、2019年4月のサービスローンチ以降、現在に至るまで右肩上がりの成長をみせており、売上は直近1年間で約10倍の成長を達成してきました。このコロナ禍でも成長スピードは落ちていません。当社サービスを使い始めた小売店のほとんどが継続的に使い続けており、またこの1年間で一店舗あたりの平均月間オーダー回数は2倍、平均オーダー金額も1.5倍以上に増加してきています。また、漁師や養殖業者(及びそのエージェント)の数も伸び続けています。このように、需要側と供給側双方のユーザーが増加し続け、かつそのオーダー頻度や金額も増え続けていることは、当社チームが高いエグゼキューション能力を有し、そのサービスがしっかりと課題解決していることの証左であると考え、ある程度のPMFが達成されているものと判断しました。

まだまだアーリーステージの会社ですし、これからが勝負なことは言うまでもないのですが、消費者、小売店、生産者の3者それぞれのペインが大きい領域で、それをど真ん中から解決しにいくチャレンジを、優秀な起業家・心強い共同投資家と共にできることにワクワクしています。

この領域は商社などの日系企業の関心も高いので、今後日印間での協業機会なども積極的に生み出していきたいと考えています。

インドのどこにいても美味しい魚介類が食べられる世界を作るため、頑張ります!

Captain Fresh: https://www.captainfresh.in/

村上

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